群馬県高崎市のリフォーム・リノベーション

事業企画部門

No.16 雪の日

投稿日:2018.01.23

少し、弱まってきたかな。」
しゅうしゅうと音を立てるストーブ、結露した窓を袖で拭う。
塀の上、屋根の上、車の上、木の枝にこんもりと積もった雪。
一面の銀世界だなんてうまい言い回しだと感心するほど、真っ白な景色。

 

街灯でほんのすこし橙に染まった雪明かりが、街の夜を包んでいた。
ひっそりと息をひそめるドウブツと、踏みしめ削りながら雪道を進むムキブツ。
響きあう命の音も雪に捕らわれて、まったく静かな夜だった。

 

「久しぶりの雪だし、明日も大変そうだなぁ。」
カーテンを閉めなおして、鍋をよそう。
湯気をあげるうつわの「みぞれ」にポン酢をかけながら、
子供のころ、雪にかき氷のシロップをかけて食べたことを思い出した。
今は、絶対にしないと言い切れる。
それでも押し寄せるわずかな衝動は、雪の日の魔法なのかもしれない。

 

 

 

No.16 雪の日

 

子供と犬は、雪が好き。
いやに声が響くのは、他の生き物は寒さで縮こまってしまうからだ、と思う。
家のそばの公園から、きゃあきゃあと幾人かの楽し気な声が響いてくる。

 

雪の日と、遠足の日だけは早起きするのが子供というものだ。
スキーウェアを着た姉に手を引かれ、自分もあんな風にはしゃいでいたのだろう。
犬から猫になった自分は、ごろごろと炬燵に入る。
1人の部屋で遠くに響く声を聴くのも、悪くない。

 

ぱさっと葉が雪を振り払った音で、目が覚めた。雪のしずれる音。
「しずる」…ふと、広告業界に勤める友人の言葉を思い出す。
五感を刺激するような表現――ジューと肉が鉄板の上で焼ける音――
なんかを「シズル(sizzel)」という。シズル感。
フレッシュな、みずみずしい広告が消費者に商品を買わせるらしい。

 

耳を澄ますと、ぼたり、ぱたり、とさっ、ざああ。
こっちの「しずる」も相当にフレッシュだ。
少しだけ緩んだ寒さの中で、生き物が身じろぎする音、風の音。
飛ぶように売れる翼はくれないが、春への期待の芽を感じさせてくれる。

 
一日照った日が、落ちかけている。
姉に手をひかれたころから今まで、すごい速さで季節は巡るのだ。

 
実家から持ってきた、一人には大きい鍋に火をかけた。
雪とシズル、大人は家であわ雪鍋。
大根を擦るのも、ぐらぐらと煮立つ鍋も、普段はしない家料理の風景。

 

今もまだ、雪の日の魔法にかかっている。

 


≪今回の言葉≫
*暮らし/住まい/家/インテリア/リフォーム/リノベーション
*物語/本/食/衣/旅/出会い/思考/文化/芸術
*姉と作ったカマクラも、学校のストーブとやんちゃした事も。思い出すのは真っ白な雪。