群馬県高崎市のリフォーム・リノベーション

事業企画部門

No.14-1 モミの木

投稿日:2017.12.22

*次回更新もあわせてお読みください

*アンデルセン童話「もみの木」のお話です

http://www.aozora.gr.jp/cards/000019/files/44423_21529.html


 

『まちそとの森に、いっぽん、とてもかわいらしい、モミの木がありました。』
冬になると思いだす、アンデルセン童話 『モミの木』
華やかなクリスマスの街並み、嬉しそうな笑顔のそばに
もしかしたら、こんなお話があったかもしれない。

 

No.14 モミの木 -ある男性の場合-

 

 

起きた時から重い頭、こわばる身体。冬だからだろうか。
冷たい床を小走りで駆けながら、熱いシャワーを浴びに起きる。

 

自分には、どうしても、やる気が出ない日というのがある。
今日のような、たとえば天気が良くなかったり、
インスタント珈琲が切れていたり、なかなか靴下が揃わないような日。
熱を持った通勤の人混みの中、ぼくは呟いた。
「今日はだめだな」と。

 

 

「わたしも、ほかの木のように大きかったら、さぞいいだろうなあ。」
おおきなモミを見あげるちいさなモミは、じぶんのことが恥ずかしかった。
まっかな顔した村の子たちに赤ちゃんと呼ばれるのも、
まっしろな野ウサギにとびこえられるのも。
太陽のひかりも彼のこころを照らすことはなく、
移り気な風をおもしろくおもうこともなかった。

 

 

電車の中で、目が合った。小さな男の子だ。
手には早いクリスマスプレゼントだろうか、ちいさな車。
寒さで赤くなった手で、一生懸命に握っている。
自分にも、車も電車もほしくて駄々をこねた頃があった。
両手に持ったプレゼントは、モミの木が星を貰った時のように誇らしかった。

 

それが、今じゃどうだ。
クリスマスなんてとうに特別な日でなくなり、
欲しいプレゼントもなくなった。
ただツイてない日が続くだけで…そう。
常に頭の上に、暗雲がかかっているような日々なのだ。
いつも通りの駅で降り、いつものように歩く。
わかっている。毎日が同じで、退屈な日常。

 

 

「わかいあいだが、なによりもいいのだよ。
 ずんずんのびて、そだっていくわかいときほど、たのしいことはないのだよ。」
 太陽も、風も、つゆも。皆が口々にそういいます。
 けれどもモミの木には、それがどういうわけかわかりませんでした。
「ああ、どうかして、はなばなしい運がめぐってこないかなあ。」

 

モミの木は街を夢見ながら、切られ、飾られ、飽きられ、捨てられ。
熱すぎる火の中で、ただ深いため息をつきました。
お話はおしまい、おしまい。それだけです。

 

改札が開かない。
あれ、と手元を見れば、チャージ不足の文字。
そうか、この間の休み、遠出したんだっけ…。
地元の友達との再会。懐かしい顔だった。

 

見知らぬ僕の街に来た友は、あてどもなく街を歩き、こう言った。

「週末に、こうやってちょっと出かけるだけで、来週のやる気がもらえるから。」
ぼくは何て言ったんだっけ。
「いつもの街を歩いたって、疲れるだけさ。」
残高の足りないSuicaのまま、火にくべられたモミのまま
そんな僕でいいのだろうか。

 

その日は、いつもより暗雲が重たく感じられた。
もやもやした気持ちは静かな嵐となり、僕の中で渦を巻く。

何も持たずに野原で駆け回っていたころの僕は

友人と同じ笑顔で、笑っていただろう?

 

「この間はごめん。来週は、もうちょっと遠出しよう。」
チャージしないままだった自分を空っぽになるまで減らすのもいい。
「たくさん歩かないと、飯もうまくないしな。」

友人の言葉に、僕は笑った。


≪今回の言葉≫
*暮らし/住まい/家/インテリア/リフォーム/リノベーション
*物語/本/食/衣/旅/出会い/思考/文化/芸術
*夢見るモミの木も、夢をみない少年も、等しく幸せなクリスマスを。