群馬県高崎市のリフォーム・リノベーション

事業企画部門

No.08 台風

投稿日:2017.09.26

 

少しだけ、強くなった風。
暖かくて重たい流れの中に、夏の残りを見つける。
秋と夏のさかいめの時間、台風到来の前日。
いつもより赤々と、不安にさせる色で、太陽が沈んだ。

 

 

No.08 台風

 

外に出ちゃだめよ、と言われても、長靴を履いて飛び出した。
体中をぶわっと気流が包み、町は静かで、リビングのテレビはつけっぱなし。
そんな台風が、私は好きだった。

 

外に出てはいけない、軽やかな風と対照的な、残酷な爪痕。
獰猛な怪物を内に秘めた回転は、あっという間に命を奪う。
そんな台風を、私は怖がった。

 

「明日はたいふうがくるので、休校です。」

 

押し入れ探検とごはん前のつまみ食い、夜中にこっそり読む本に似た感覚。
イケナイこと、の引力で台風はまわっている。
ぐるぐると回転しながら進むそれは、困った気持ちと好奇心とをかき混ぜて
私は胸が一杯になってしまう前に、たまらず外へ飛び出した。

 

あれから数年、大人になった。
朝のニュースをじっと見る人、明日もこの電車に乗れるのだろうかと駆け込む人
きちっと決まった時間の中で進む社会は規則正しい行進を続けていて、
列をはみ出す台風は、仲間外れだった。

 

明日も同じ明日が来る

それがイイコトになったのはいつからだろう。

 

ベランダから、今日の終わりを見つめる。
あれほどわくわくして、怖かった台風は、モニター上の白い丸でしかない。
知るという武装。

慣れの鎧に包まれたのは、重たい身体。
その体のてっぺん、気が付けば頭には、カタコトカタコトと電車が走っている。

規則正しい音を立て、規則正しく私を走らす。

 

台風の風は、どこから吹いてくるのだろうか。
私はまだ、気が付かないまま。

 


≪今回の言葉≫
*暮らし/住まい/家/インテリア/リフォーム/リノベーション
*物語/本/食/衣/旅/出会い/思考/文化/芸術
*夏の終わり、見送りの風。形なき流れに色を付けるのはあなた、発生源はすぐそこに。